大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和33年(く)54号 決定

少年 R(昭和一三・一一・八生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、本抗告申立人は原審判、決定後十数日にして満二十年に達するものであるのに原決定により少年院に送られたことは不服である。同じ修養するならば、大人ばかりの刑務所において修養をしたい。前科者になつても社会で真面目に働き更生すれば、年月の経過と共に前科も消えることである。社会に出たときは刑務所で苦しい仕事をしたことを忘れず職場で働きます。従つて少年院での修養より刑事処分を希望するため本抗告に及んだものであると言うのである。

よつて記録を精査し案ずるに、本抗告申立人は昭和十三年十一月八日生れで、原審判決定後十数日にして満二十年の成人に達するものであつたことは所論のとおりである。しかし右決定当時少年であつたことは相違ないことで、原審の決定が適法であることは勿論であるのみならず、本人は本件記録中の昭和三十三年十月二十二日付の鑑別結果通知書によれば、現在症として軟性下疳膀胱炎があり、精神状態は精神病質である上、自主性に乏しく年齢に比し未だ自立自営を期待し得ない状態である。その求めているものは精神的支柱としての指導者であるから、本人に対する処置は刑務所による訓練、修養よりも、原決定の措つた医療院送致決定が相当であると思料せられる。従つて本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山本武 裁判官 三木良雄 裁判官 坪倉一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例